番外5:『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』

ちなみに少しだけですが・・・(汗)

『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』(アルフレッド・W・クロスビー みすず書房)
1918年に全世界で起きた「スペインかぜ」に関する内容。

書籍内ではアメリカで起きたことを中心に書かれています。
400ページを超える厚さで、現時点で読んだのは終盤の約20ページのみ。
ただこの20ページが私にとってもっとも重要な箇所でした。

なぜ、スペインかぜは忘れ去られてしまったのか。

読んでみると3つの要因が挙げられると思います。

1:第一次世界大戦の影響
第一次世界大戦の終わりと重なったことでまさしくタイトル通り忘れ去られた、ということが言えるかと思います。
第一次大戦という4年に渡る戦いに比べればオーバーではありますが些細な事と考えられたのかもしれません。

2:様々な感染症との共存
現在と比べ当時は様々な感染症で死亡する人も少なくありませんでした。
一例として「発疹チフス」「黄熱病」「ジフテリア」「コレラ」の感染症も現在より多く発生していました。
COVID-19(新型コロナウイルス)の感染者に対する死亡率は3%前後ですが、上記の現在の感染症の死亡率は以下の通りです。

 発疹チフス 10-40%
 黄熱病 30-50%
 ジフテリア 5-10%
 コレラ 2-4%

「スペインかぜ」は確かに一大事ですが、上記の病気に比較して「程度の問題」ということは誤りとはいえません。

3:致死率の低さ
序盤の一節に
「概して我々は、死亡率は低いが早晩自分たちが関わることになるはずの現実的な病気より、自分たちがほとんど罹りそうにもない高い死亡率を持つ病気の方にずっと恐怖を抱くものである。」
と著者は述べています。
スペインかぜの死亡率は決して低くなかったものの現在の新型コロナと同じ程度の2-3%。
不適切な表現かもしれませんが95%以上は亡くならないということ。
患者数は絶対にスペインかぜや新型コロナより少ないものの、例えば未治療の場合「死亡率100%の狂犬病」と比べれば人々へのインパクトは低いのかもしれません。

もちろん家族の方でスペインかぜで亡くなられた方にとっては一大事でしたが、多くの方にとっては一時的な社会現象程度のレベルだったのでしょうか?

忘れ去られた要因はこれ以外にもあるかと思いますが、スペインかぜの実態をつかむのに役に立つ一冊だと感じました。

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